【2024年度】第6回上場を目指すための企業成長セミナー「社会性」を開催いたしました!
2024年11月8日、鹿児島中央ビルディング8Fにて第6回KIP企業成長セミナー「社会性」が開催されました。
不祥事でIPOを挫折?コンプライアンス強化でIPOを円滑に!
弁護士法人如水法律事務所 代表 橋本 道成氏
第1部のセミナーは、「上場における法務リスクと留意点」と題し、 弁護士法人如水法律事務所 代表 橋本 道成氏にご登壇いただきました。今回のセミナーの目標として、「内容を全て理解するのではなく、会社の基礎体力を上げるときに、どういったことを経営者として意識しなければならないのか、ポイントを知ること」と述べる橋本氏。上場審査でチェックされる契約書に関するポイントや、資本政策の注意点など、IPOにまつわる法律や契約について、具体例と共に多くのことをお話しいただきましたが、特に注目度の高いのトークテーマとなったのは、「コンプライアンス」について。
コンプライアンスが重要な理由として、
- 民事的な賠償責任
- 刑事責任
- 社会的評価の低下による業績低迷・信用棄損
という、経営において多大な影響を受けることをあげられました。
また、社内で起こる不祥事について、「不正のトライアングル」が存在すると述べ、「動機」「機会」「正当化」の3点が全て揃うことで不正が起こってしまうと語ります。つまり、逆説的には、この「不正のトライアングル」の芽を摘むことで不正を未然に防ぐことができるということ。IPOを目指す上で、社内で不祥事があってはどんなに準備をしてもIPOを挫折することになってしまうかもしれません。社員の負担軽減や不正を起こさないための環境づくり、社内に不条理を生み出さないなど、働くすべての人が心地よく過ごせる職場づくりがコンプライアンスへの第一歩ではないでしょうか。
さらに、橋本氏は、「コンプライアンスを重要視する姿勢を経営者が社員に見せることが必要。自分自身が意識している姿を見せることが、社員をセミナーを受講させることとは違う効果がある。」という経営者としてあるべき姿についても語っていただきました。
便利なSNSに潜む影 「炎上さしすせそ」をチェックして快適なSNS運用を!
さらに、現代社会ならではのコンプライアンスのテーマとして、「SNS管理」があげられました。昨今、企業の公式アカウントは多く存在しており、顧客と近い距離で情報発信ができ、リアルタイムに情報を発信できるSNSは有力なツールです。今、この記事を読んでいる貴方も、企業のSNSをチェックした経験があるのではないでしょうか。
炎上する理由の多くは、価値観の多様性に配慮しない攻撃的な投稿。そのような投稿は、IPOを目指す企業としてはもちろん、企業の運用するアカウントとして適切ではありません。橋本氏は投稿の際に特に配慮が必要なキーワードとして、「炎上さしすせそ」をあげました。
- さ:災害・差別
- し:思想・宗教
- す:スパム・スポーツ・スキャンダル
- せ:政治・セクシャル
- そ:操作ミス(誤投稿)
前提として、炎上しないことが望ましいですが、もしも炎上した際の処分や対応についても社内で検討しておく必要があります。
今回は、「社会性」というトークテーマのもと、IPOを目指す上ではもちろん、現代社会で生き抜く上で人として重要な視点が得られたセミナーとなりました。
IPOに向いている企業とIPOに向いていない企業 IPOに必要な精神力とは
有限責任監査法人トーマツ シニアマネジャー 角田 望氏
第2部のワークショップは、「上場の準備をするにあたって」と題し、有限責任監査法人トーマツ シニアマネジャーの角田 望氏に解説をいただきました。
これまでのセミナーでは、「収益性」「計画性」「組織性」という上場審査に求められる3つの視点を用いて、企業経営の骨組みを強くする方法を学んできました。会社の成長スピードを早めるためにも、IPOを目指すための視点は重要です。
そして迎える今回の「社会性」。上場企業になるということは、プライベートカンパニーからパブリックカンパニーへの脱却を果たすということになります。個人の利益だけではなく、会社の利益をあげ、株主への還元を行う必要が発生するのです。このように、IPOをすることで目まぐるしく変化する企業の環境。その大きな変化には、メリット・デメリットの両方が存在します。
【IPOのメリット】
- 会社のメリット:知名度・企業イメージの向上・優秀な人材の採用
- 従業員のメリット:従業員の財産形成・社会的信用の増大・従業員としての満足感
【IPOのデメリット】
- 経営責任・社会的責任の増大
- 組織的な会社運営の必要性
- 経営透明性の要求
角田氏は、以上に述べたメリットに加え、経営面での負担をデメリットとしてをあげられました。さらに、費用面での負担も大きく、見合うメリットを享受できる見込みがなければ上場についてはよく検討する必要があると語ります。
IPOで得られるメリットや壮大な夢ばかりではなく、実情に即した決断が必要であることがわかる一幕となりました。
続くワークショップでは、「貴社の事業を継続して成長させるための現状の課題や改善を図るために活用したい上場のメリットを整理し、グループ内で発表してください。」という課題に挑戦。
自社が現在抱えている課題に対して、IPOを目指すことによるメリットはなんだろうか?と考える作業です。自社とIPOの関係性について再考し、いつも以上に真剣な顔つきの皆さん。
今回多く意見が上がったのは、内部統制について。「慣性で成り立っている現状では、新たなルールを作り全社員に納得してもらうのは困難。しかしながら、IPOという一定の型を活用することで、0からのスタートではなく基準が設けられ、内部により良いシステムを構築することができる」という、IPOを用いてより良い内部統制を目指そうとする意見が多くあがりました。
角田氏は、「株式上場は、企業が成長するための一つの手段であり、ゴールではない」と語ります。企業成長のために資金調達する場の選択肢の一つとして株式市場があるため、業績が比較的安定しており、これ以上の規模の拡大を望まないような会社の場合には、株式上場を目指すことがベストの戦略とは言えない場合もあり、株式上場のメリットデメリットをよく検討する必要があると述べ、その企業にあった戦略を考える重要性について説きました。
まさに、今回IPOを内部統制の手段として考えた皆さんは、IPOをゴールではなく、より成長していくための手段の一つとして捉えているようです。これまでのセミナーでしっかりと学んできた軌跡が伺えます。
加えて、角田氏は「上場企業としての経営管理体制の整備や上場を維持するためのコスト、外部監査を受ける手間など、企業の負担が大きくなる面もあるので、株式上場は成長思考が旺盛な会社が検討すべき戦略である。」と語ります。本質的には、運用する側(企業)に倫理観や誠実性が必要であるとも語り、今回のセミナーでデメリットとして語られた経営面の負担についても触れ、「上場準備の過程においては、社内外の様々な利害調整が必要となるため、重圧やストレスに屈せず、倫理観・誠実性をもって、ぶれずにやり抜く精神力が必要」と締めくくりました。
第1回上場を目指すための企業成長セミナーは「株式上場とは?」
今回のセミナーでは、メリットだけではないIPOについて深く向き合うことのできた時間だったのではないでしょうか。全6回を予定していたセミナーは、残すところ、台風で延期されていた第1回の「企業の成長に欠かせない株式上場」のみとなりました。
講師に古賀マネージメント総研 ( 株 ) 代表取締役 公認会計士 古賀 光雄 氏をお招きし、株式上場支援の専門家(上場請負人) としての経験を交えながら、「企業が成長する」とはどのようなことかを説明していただきます。
こちらもこれまで同様、活動事例として報告して参りますので、ご期待いただけますと幸いです。