【2025年度】IPO支援コース 企業成長セミナー「株式上場の実務」を開催いたしました! 

2025年9月25日、鹿児島中央ビルディング 8Fにて、企業成長セミナー IPO支援コース「株式上場の実務」を開催いたしました。

証券市場の選び方と上場への道筋

ブリッジコンサルティンググループ株式会社 福岡事務所長 谷口 康平氏

IPO支援を行なうコンサル会社でありながら、TOKYO PRO Marketから東証グロース市場へのステップアップを経験したブリッジコンサルティンググループ株式会社。福岡事務所長の谷口氏が、上場に向けたリアルな視点と具体的なステップについて解説しました。

谷口氏は、証券市場の役割を「資金調達」と「企業価値向上」の2つに集約し、銀行融資に依存しない財務体質の強化や資金調達手段の多様化が可能になると述べました。上場を企業の成長の旅に例え、各市場を遊園地のアトラクションに例え、ユニークかつ明快に示されました。今回のセミナーでは、ブリッジコンサルティンググループが上場した以下の2市場をメインにお話いただきました。

  • TOKYO PRO Market (TPM): 会員制の特別アトラクションエリア。プロ投資家のみが取引可能で流動性は低いものの、J-Adviser制度による手厚いサポートが特徴。最短2ヶ月での上場が可能で、コストも一般市場の約70%削減が可能。成長企業の登竜門としての役割を担い、グロース市場へのステップアップ事例が増加しています。
  • 東証グロース市場: 新アトラクションエリア。高い成長可能性を持つ企業のための市場で、経営成績よりも事業の将来性が重視されます。流通株式時価総額5億円以上という他市場より柔軟な基準が設定されており、上場後は事業計画の進捗開示義務があります。

市場選択は人生選び?目的から逆算してピッタリの市場を見つける

谷口氏は、市場選択について、「目的から逆算する」ことが重要だと述べました。自社の成長ステージに合わない市場選択は、維持コストと期待値のミスマッチ(オーバースペック)や成長機会の損失(アンダースペック)につながるリスクがあります。

実際にTOKYO PRO Marketを経由してグロース市場へステップアップした道のりを紹介し、そのメリットとデメリットを具体的に解説しました。

【TPM経由のメリット

  • 確実な上場準備: TPMは収益性に関するハードルが低いため、内部管理体制の整備に集中できた。TPM上場というマイルストーンがあることで、精神的なプレッシャーを軽減し、計画的に準備を進めることができた。
  • 知名度と信頼性の向上: TPM上場によって企業の知名度が向上し、東証のマークを利用可能に。これにより、名刺交換時の信頼性が高まった。
  • 実務経験の獲得: 実際に上場を経験することで、事業としてのIPO支援の質が向上した。

【TPM経由のデメリット

  • コスト負担の増加: TPM上場にかかるコストと、上場企業としての適時開示などの責任を負う必要がある。

    しかし、デメリットを挙げながらも、谷口氏は「広告宣伝費と考えるならば、金額的に高いと感じるものではない」と述べ、デメリットを上回るメリットの大きさを語りました。

谷口氏は、TPM経由の上場に向いているのは「1つずつ確実に準備を進めたい会社」や「マイルストーンを設けてモチベーションを維持したい会社」だと語りました。一方で、すでに大規模な資金調達を終えている会社は、TPM経由の必要性は低いと指摘しました。

谷口氏は、上場を企業成長のための戦略的な手段として活用することの重要性を述べました。特に、TOKYO PRO Marketを賢く活用することで、着実に成長の階段を上っていくという新しい選択肢は、多くの企業にとって有益な情報となりました。

事業計画策定を疑似体験 意見交換で自社の課題が浮き彫りに

有限責任監査法人トーマツ 上野 俊弘 氏

第二部はワークショップ。参加者は、セミナーで得た知識を基に、自社の上場ストーリーを作ります。有限責任監査法人トーマツ 上野 俊弘 氏は、セミナーの内容を踏まえ、まず市場選びの重要性を再確認しました。参加者には、一般的な上場スケジュールが共有され、上場準備に関わる関係者との連携の必要性も説明されました。

ワークショップの目的は、参加者が漠然と抱いていた上場への思いを、具体的な行動計画へと落とし込むことでした。セミナーで強調された「逆算」の考え方に基づき、各自が自社の状況を当てはめながら、上場への道筋を描く作業が行われました。

上野氏は、上場を目指す企業が直面する課題について、「課題はあって当然。これまで事業に集中してきた企業にとって、上場基準を満たすことは容易ではありません。」と語ります。「課題があって良い」と参加者を励まし、これまでの事業の土台を活かして上場基準に適合させていくことが重要だと述べました。
また、特に時間がかかる要素として 「労務」 が挙げられました。従業員の意見を確認しながら制度を調整していくプロセスは、上場準備の中でも特に大変な作業です。

また、上場審査では、主に以下の4つの視点が重要となります。

  • 収益性: 安定した収益基盤があるか。
  • 計画性: 将来の成長に向けた具体的な事業計画があるか。
  • 組織性: 適切な内部統制や組織体制が構築されているか。
  • 社会性: 社会的責任を果たしているか。

上野氏は、上場準備の過程で最も困難なことの一つは、これらの要素を「他人に分かりやすく説明すること」だと強調しました。さらに、説明した内容が検証され、計画の根拠について深く掘り下げられるため、継続的な改善が求められます。これまで高い自由度で経営してきた企業にとって、上場基準に合わせることで「窮屈さ」を感じることもあります。このような局面では、専門家の支援を借りることが有効であると述べました。

上場準備のプロセスは、厳しく、精神的にも負担が大きいものです。上野氏は、目標を見失わないことの重要性を強く訴えました。「心が折れそうな時ほど、上場によって達成したかったこと(利益や雇用など)を忘れないで欲しい」と、上場準備の苦労を乗り越えるための原動力となる言葉で締めくくりました。

ワークショップ全体を通して、上場という目標が、単なる形式的な基準を満たすことではなく、企業の成長と、それを支える人々との対話によって築き上げられるものであることが再確認されました。

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